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コーヒー焙煎も闇が深いかも [日常]

自転車の漕ぎ方のコーチングも、かなりオカルトな(非科学的な)事を平気でネットや雑誌で披露する方々がけっこうおられので、最近では事実のみを参考にし、そこで語られる解釈は参考意見として承ることにしている。本業の科学の世界では査読というシステムがあるので、オカルトな論文は少ないはずなのだが、実際のところ多数存在しているのが事実で、人間とはそういう生き物なのかもしれない。

さて、最近ハマっているコーヒー焙煎だが、なかなか思い通りに焼けず、しょっちゅうネットで焙煎方法を探っている。おかげで、自分では手鍋で焼いているにもかかわらず、各種焙煎機とその使い方、焙煎士の講釈にずいぶん詳しくなった。通常の焙煎装置では、加熱方法が何種類かあるが、窯の温度を測る温度計と豆に触れて豆の温度を測定する温度計、火力の調節機構、排気装置と排気の流量をコントロールするダンパーでできているようだ。各自、自分の装置でどのように焙煎するかを講釈するのだが、なかなか闇が深い。興味深いのが、「カロリー」だ。焙煎装置の制御では、二つの温度計の出力が頼りであり、これらの値にいろいろ意味を見出し、独自の理論を展開するのだが、その理論がオカルトで興味深い。焙煎装置は、上記の通り加熱部分と排気装置からできているため、窯と豆の総重量で決定される熱容量と、バーナー等による加熱の熱量、排気装置から放出される熱量のバランスで系の温度変化が決定される。これは断熱系とは程遠いシステムなのだが、どうも投入された熱量で豆の状態が変わると信じている人が多い様だ。ここで出てくるのが豆の温度に時間を掛けた積で定義される「カロリー」だ。高温で長時間さらされた豆には、大量のカロリーが蓄積されているというような表現をする。この「カロリー」を制御することで、思い通りの焙煎をする理論らしい。特に興味深いのが、豆の温度を測定する温度計の示す温度が、余熱の200℃付近から豆の投入によって冷やされて示す最低温度(中点とかボトムとか言う)を重要視する事だ。いくつかのプロファイルを見ると、このボトムが1分程度のものや、2分近いものがある。この温度計が豆の温度を測定しているなら、豆を投入した直後に、室温付近に変化しなければおかしいのだが、100℃くらいまで冷えるのに、1分程度かかるという、お粗末なシステムなのである。焙煎装置によるレスポンスの違いは、温度計の熱容量と配置の違いによる装置関数の違いであろう。豆の温度という最も重要なパラメータを測定するのに、1分程度の時間がかかるという、ずいぶんレスポンスの悪いセンサーで制御しているという事になる。焙煎時間は15分程度なので、このような鈍感な指標で、微妙な調整をすることは難しいと想像できる。おそらく、耐久性からステンレス製のさやに入った熱電対をセンサーにしていると思われるが、これは一定の温度を測定するためのセンサーであり、変動する温度を測定するためのものでは無い。つまり、恐ろしくレスポンスが悪い。こんなセンサーが使われているのは、大量の豆を焙煎する装置では、もともと豆の温度を急に変えられないためだと思われるが、実際にはかなり小型の焙煎装置でも、類似のセンサーを使っているようだ。熱電対自体の熱容量は小さいので、むき出しで使えば、ずっとレスポンスは良くなるのだが、相手は食品なので、ちぎれて混入する危険のあるむき出しの熱電対は商用には使えないか。まあ、個人で使う分には問題ないと思うが。
話が脱線した。気になっているのは、豆の水分量の変化による熱容量の変化には無頓着な人が多いことだ。焙煎では、豆の水分量が大きく変化する。当初15%程度含まれていた水分は、焙煎後は2-3%まで減少するらしい。水の熱容量は一般に大きいので、豆の熱容量は水分量の変化で大きく変化するはずだ。熱容量が変化すれば、与えた熱量に対する温度上昇が変化する。1ハゼは、おそらく豆に残留する水分が高圧の蒸気となって豆の構造を破壊することによって生じる現象なので、1ハゼ後の豆の熱容量は大きく減少する。1ハゼ後にも同じ温度上昇カーブを維持する場合には、与える熱量を減らす必要があることになる。実際、1ハゼ後の加熱調整はそのようにする人が多い様だが、そう説明する人は少なく、ここでも「カロリー」が登場して、独自の世界が展開されるのだ。
まあ、おいしく焙煎できれば理屈はどうでも良いという側面もある。おいしく焙煎できない私は、彼ら以下の存在だ。自転車もそうだ。オカルト理論でも速ければ正義だ。漕ぎ方が下手な私は、オカルト以前の問題だ。しかしだ、オカルト理論で金をとるとなると、話は別だ。(オカルトな主張をする焙煎士は排他的である事が多い)こういった趣味の領域には、怪しげな商売が暗躍する余地があるようだ。
まあ、これも文化と呼ぶのかも知れないが。

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