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コーヒーの手鍋焙煎、ようやく楽しめる領域に到達 [日常]

ネットで見つけた手網焙煎に始まり、ハマコーヒーの動画で手鍋焙煎を知り、いろいろ試行錯誤して来たが、ようやくいろいろな疑問にも自分なりに結論が出て、コーヒーの味を楽しめる領域に到達してきたので、ここで一通りまとめてみたい。

1.道具立て
手鍋焙煎では、コーヒーを焼くのに片手鍋を使う。片手鍋による焙煎は、ほかの方法と大きく違う点がいくつかあり、それゆえにうまく焼けるのだが、気を付けなければならない点もあるようだ。
さて、手鍋焙煎では、コーヒー豆に直接火があたらないし、炎からの熱気(温風)も入らないので、鍋肌からの熱伝導で焼くことになる。鍋肌と豆の接触面積は小さいので、むら焼けしやすい。これを少しでもましにするために、鍋の温度を均一にする必要がある。鍋肌の温度が均一であれば、全体で包み込むように加熱され、焦げにくくなる。なべ底だけが熱くなるような鍋ではうまく焼けない。そのため、鍋はアルミ鍋が良いことになる。実際にいろいろ試して、アルミ鍋がベストであると確認した。
で、コーティングの問題がある。アルミ鍋には、アルミむき出し、アルマイト処理、テフロン加工、セラミック加工などがある。テフロンは、高温で毒性の高い分解物が発生するので、好ましくないと思っていたが、まあ実際には通常の調理でもかなりの高温になることはあり、それでも大きな問題になっていないので、熱分解に関してはおそらく大丈夫なのだろう。最初気になって、アルマイト処理を探したのだが、アルマイト処理の耐熱性はテフロン加工と大して変わらないので、やはりコーヒー焙煎などという過酷な使用法には耐えられそうにない。一方、熱で劣化したテフロン加工やアルミむき出しの状態は、使いたくない。アルミニウム摂取による痴呆症の原因となる可能性がゼロでは無いからだ。テフロン加工鍋は100回ほど使用すると、かなりダメージを受け、買い替えたくなる。いろいろ迷っているときに、5チャンネルでセラミックコーティングが良いという書き込みを見た。アマゾンで見ると1600円ほどなので、京セラのセラミック鍋を買ってみたところ、耐熱性が高く具合が良い事がわかった。というわけで、現在の一推しはセラミック鍋である。京セラのセラミック鍋は、アルミの厚みがかなり厚く、全体に重い。しかも、底の丸みのRが大きいので、豆の攪拌がやりにくいという欠点があるが、それ以外は非常に良い。

2.焼き方
 実はこれが紆余曲折あって、ようやく結論に達したと思っている。火加減などは、鍋の種類によってかなり変わるが、何度か焙煎して最適な火加減を決めれば、焙煎中にそれほど大きく変更する必要は無さそうである。実際、そんなに微調整する余裕も無い。鍋を振る頻度だが、これは豆の焦げを防ぐために、できるだけ頻繁に振るのが良いに決まっている。しかし、プロの用いる焙煎装置でも、窯と豆の接触が変わるのは1-2秒おきなので、2秒程度は鍋を振らなくても大丈夫そうだ。振っている時間はできるだけ短くして、速やかな温度上昇を目指す。振っている時間が長いと、それだけ焙煎時間が長くなり、風味が損なわれるからである。
 京セラのセラミック鍋では、やや強火にして、2秒ゴトクにおいて、1秒振るを繰り返すのみである。熱容量が大きいので、なかなか温度が上がらず、8分で1ハゼが来るほどに加熱するのは、容易ではない。実際には低温の時間が長いので、1ハゼまでの時間はあまり気にしなくて良いと思っている。というか、無理に短時間で温度を上げると、あまりおいしく焼けない。むしろ、温度が上がってきてからの挙動を見ることの方が肝心である。現在は、1ハゼまでの時間は12分程度かかるくらいが良いと思っている。
 重要なのは、1ハゼからである。ハマコーヒーの動画では、蓋を開けて温度調整することになっているが、これは不要との結論に達した。鍋焙煎の最重要課題は、均一な加熱であるのに、蓋を開けてしまうと、室温の冷たい空気が流れ込み、せっかくの均一な温度空間が乱されて、むら焼けにつながってしまう。実際、何度も試して確認したが、蓋は開けない方がうまく焼ける。蓋開けには、酸素の供給の意味もあるかも知れないと、いろいろ考察したが、加熱によりコーヒー豆の細孔からは常にガスが噴出しており、コーヒー豆に酸素が取り込まれる可能性は低いと考えられる。しかも、蓋を開けて、酸素が鍋に流れ込むと、白煙が生じる。これは、加熱で豆から発生したガスが酸化する事で生じた煙だと思われる。蓋を開けなければ、鍋の中は低酸素状態で煙が発生せずクリーンである。つまり、蓋を開けていぶり臭を追い出すというのは間違いで、むしろ蓋をあけると、いぶり臭が発生すると思われる。
 最近のスマートロースターでは、構造上低酸素で加熱する状態に近いと思われる。鍋焙煎は、蓋を開けなければ、それに近い低酸素状態が維持できるので、直火焙煎などよりも好ましいと思われる。問題は水が抜けるのかという点になるが、これも問題が無い。当初、1ハゼで水蒸気が大量に発生するので、蓋を開けて放出するのだと思っていたのだが、よくよく考えてみれば、蓋を開ける必要など無い。水蒸気が抜ける穴や隙間はいくらでもあり、蓋が熱い方が水蒸気は良く抜ける。そもそも、一ハゼを起こすほど、水蒸気の膨張率は高いし、力もある。蓋を開けなくても、鍋から勝手に出ていくわけである。むしろ、蓋を開けると蓋が冷えて、そこに水蒸気が結露する可能性がある。
 実は、蓋を開けずに焼いた豆は、焼いた直後は香りが薄い気がする。焙煎直後は、蓋を開けて焼いた方が、風味豊かに焼けたような気がする。しかし、数時間おいて豆が落ち着いてくると、蓋を開けた方は好ましくない香りが少し混じってくるのがわかる。蓋を開けない方が嫌な香りがせず、徐々に良い香りが立ってくる。香のピークは2日後あたりと思われる。ちなみにこの変化は、炭酸ガスが抜けるからだと良く書いてあるが、豆の状態でも挽いた後でも、コーヒーにしても、明確に香りや味が異なるので、単にガスが抜けたという理由ではないと思われる。おそらく、室温でもメイラード反応が進行しているためではないだろうか。炒り止めは、反応がバリバリ進んでいるところで急冷するわけだから、その時の活性化された材料で反応がゆっくり進んでもおかしくない。
 というわけで、1ハゼが来ても、やることはひたすら鍋を振ることだけである。あとはどこまで焼くか、豆の色、蓋の穴から噴き出す煙の出方、その香を嗅ぎながら、ここぞというところで、火を止め蓋を開けて、ふるいの上に広げ、シャカシャカ振ってチャフを落としながら冷やすのみである。途中で蓋を開けないことで、最後まで均一に加熱され、豆は良く膨らみ、焦げもできにくい。チャフも飛び散らないので、掃除も楽だ。
 
3.水抜き工程
 水抜き工程は必要かという問題は、ニュークロップでは必要だという結論になった。ニュークロップは、まだ豆の芯が十分に乾燥していないようだ。豆の外側はいい感じに乾燥しており、そのまま焼けるが、芯の部分は水分が多すぎて、そこが生焼けになる可能性が高くなる。したがって、古い豆よりも、低温での加熱時間を長くして、芯の部分まで均一に加熱する必要があるようだ。1-2年経過して、芯まで十分に乾燥している豆は、普通に加熱すれば水分は勝手に抜ける。

2021.7.18 追記
ダブル予熱でさらにおいしく焙煎

京セラのセラミック鍋で、そこそこおいしく焙煎できるようになったが、香りが今一つだった。で、いろいろ考えると、手鍋焙煎の弱点は初期加熱にあると思いいたった。鍋肌からの熱伝導で加熱するため、短時間焙煎をしようとすると、鍋の温度を上げるしかない。そうすると、豆の表面が焦げやすく、芯残りしやすくなる。鍋の温度を上げないと、時間がかかり風味が劣る。丁度よく火加減を調整すれば良いのだが、温度計も無いし、火加減の微調整は難しい。
というわけで、芯残りしないように、あらかじめ豆の中心温度を上げておけば、最初から強火で焙煎しても大丈夫だろうと考えた。中心を加熱するのは電子レンジだ。豆だけ予熱しても、鍋が冷えていたら結局鍋の昇温に時間がかかってしまうので、鍋も予熱したい。しかし、ただ空焚きするのは加減が難しい。これを解決するのが、お湯を沸かすことだ。
まず、鍋に100ml程度の水をいれ、火加減を強火に調整する。そしてお湯が沸くまでに、豆を電子レンジで予熱するわけだ。電子レンジはすぐにむら焼けするので、10秒加熱したらスプーンでかき混ぜるという工程を4-5回繰り返す。そうこうしているうちに、鍋の水が沸騰する。しばらく沸騰させれば、鍋も蓋も100℃に予熱される。これは再現性が良い。最後に、鍋のお湯を捨てて、レンジで予熱した豆を投入し、そのまま強火で焙煎するというわけだ。お湯が少し残っていても問題ない。すぐに乾燥する。豆も予熱しているので、すぐに豆から水分が蒸発し始め、芯残りすることなく、具合よく色が変化して8分を待たずに1ハゼ、お好みにより2ハゼと、焙煎を進める。1ハゼの熟成は1分半程度としている。いい具合のところで、火を止めふるいの上に取り出し、チャフを振るい落とせば終了だ。
この方法で、モカをミディアムで焼いてみると、これまでで一番薫り高く、雑味も全くないコーヒーになり、大満足だ。1ハゼ時に蓋は開けていない。蓋を開けない方法で問題があるのは、フレンチ以上に深く焼いた場合だ。豆が油でべたべたになるためチャフの粉が張り付き、ふるいでふるっても完全には除去できなくなる。蓋を開けてやれば、油が酸化して少しチャフが取れやすくなるように思うが、しょせん手鍋焙煎ではチャフを完全に除去するのはあきらめる方が良いと思っている。そもそもチャフの量は計量できないレベルの軽さで、見た目には気になるのものの、最終的なコーヒーの味にはあまり影響がないと思っている。実際、雑味やえぐみは特に感じない。
ブラジルサントスは柔らかくて表面が焦げやすく、強火で短時間焙煎すると、刺激的な味になりやすいが、レンジで予熱すると、短時間焙煎でもかなりましな感じがする。高い標高で栽培された硬いコーヒー豆なら、この方法でまず問題なく焙煎可能だった。

2021.8.16 電子レンジによる予熱はNGかも
私にとって、焙煎の基準はサントスNO.2である。上に、レンジ予熱でサントスがうまく焼けたと書いたが、その後何度か試し、やはり予熱は良くないという結論になりつつある。サントスは、初期の過加熱に弱く、じっくり水抜きをしないとひどい雑味が出る。(これは、季節にも依るのかも知れず、夏の今は冬よりも難しい気がする。)レンジで予熱してしまうと、水が抜けきる前に、高温になってしまうようで、雑味が少し残る印象だ。むしろ、一切予熱をせずに、低温からじっくりゆっくり加熱した方がマイルドな風味になるように思われる。焙煎の終盤では豆の表面の焦げが問題になるので火力は上げられず、序盤では水が抜ける前に加熱すると芯残りしやすく、結局終始弱めの火力で焼くしか無くなり時間がかかるので、風味が立たなくなってしまう。試行錯誤はかなりの回数になるが、このジレンマはまだ抜け出していない。とりあえず、雑味も風味も無い方が、雑味が強くて飲めないよりもマシなので、のんびり焼く事に落ち着いて来ているが、今後より最適化できるのか、もうあきらめるのか。他の豆は比較的楽で、どう焼いてもその焼き方に依存した風味の違いを楽しめるのだが、サントスは難しい。うまく行くとそれなりにおいしいのだが、これだけ失敗すると、もうやめようかとも思う。多くのブログで、サントスの焙煎は簡単で初心者向けと言っているが、未だに真意がわからない。初心者でもみんな上手に焼いているのか、私が雑味と感じている風味が実はサントス本来の味なのか、みんな味覚がいかれているのか、私が大きな過ちを犯しているのか。さてさて。

2021/11/10 追記
サントスの雑味の原因は芯焦げであった。フタを開けずに焙煎すると、芯焦げしやすい。詳細は別記事に記す。


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タガミ

最近鍋焙煎を始めた者ですが、もっと安定しないかと模索しております。
こちらの焙煎関係の記事を興味深く読ませて頂きました。

1ハゼで蓋の開閉は当たり前と思ってましたが、結果温度が下がりハゼが止まる・・・とそれが不確定要因になっていました。
酸素供給でガスが酸化し白煙が立つとのご推察には目からウロコ!
さっそく焼いてみました。
1ハゼから2ハゼまでスムースに推移できました。
おまけに開閉回数が減ることでチャフの散乱も減り感謝しております。
とっても参考になる事柄が多く、今後もお気付きのことがありましたら是非公開頂けたら幸いです。
by タガミ (2021-10-04 20:35) 

Keroro

はじめたばかりの初心者です。私も京セラ セラミック鍋をつかっています。16cmです。一回あたり、120gで練習中です。
ネットだと、10分以内で1ハゼというのを見かけますが、強めの火力でも、12、3分かかります。書かれているように、鍋の特性によるのですね。勉強になりました。1ハゼ後のフタ明けは、皆さんご存知の動画を真似て、やっておりますが、なぜか、嫌な苦味がうっすら残り、困っていました。記事を拝見して、熱が下がり、鍋肌温度を上げざるを得ず、芯焦げしているのかと思い至っています。動画は、アルミ鍋ですし、特性が違うから、かもしれませんね。年明け初焙煎は、蓋開け無しで試してみます。これからも、鋭い記事を楽しみにしております。
by Keroro (2022-01-01 11:43) 

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