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コーヒーの自家焙煎にはまる [日常]

先日、次のページを見つけて、なぜか心ときめいてしまった。「自家焙煎から始まった世にも恐ろしいコーヒー沼の話」いわく、手網を使えば、ポップコーンをつくる感じでコーヒーが焙煎できるよという。コーヒーの生豆は長期保存が可能だが、焙煎してしまうと1か月ほどで劣化してしまい、まずくなってしまうという。挽いてあれば、劣化はもっと早い。しかも酸化以外による劣化が顕著だということで、窒素パックも効果がない。したがって、スーパーで買うコーヒー豆から飲んでいると、おのずとその鮮度、風味に限界があるわけだ。だから自宅で淹れるコーヒーはスタバのコーヒーとは全然違うのかと。コーヒーの自家焙煎でググると、高価な焙煎マシーンがいくつも出てくるが、銀杏を炒る手網は1500円くらいで買える。これは安い!もし、これで本当においしいコーヒーができるなら、これはやってみる価値がある。というわけで、アマゾンで手網をクリック。コーヒーの生豆は、やはりアマゾンで、1㎏で1000円程度のブラジルを購入した。これで、うまいコーヒーが飲める!
と喜んでやってみたのだが、一回目、大失敗。家じゅう煙だらけになり、真っ黒なコーヒーができた。ネットで復習して、再挑戦。何度か繰り返すうちに、いい感じに焙煎できるようになった。自分で焙煎したコーヒーは、愛着もあり、焙煎したてなので、味もまあまあといえばまあまあ良いのだが、スタバとは雲泥の差、いやスーパーの豆にも劣る味と香りだった。何かがおかしい。というわけで、お勉強スタート。
研究室に、コーヒーに詳しいメンバーがおり、田口護氏の本を貸してくれた。どうやらコーヒー界のドンらしく、いろいろ詳しく書いてある。しかし、手網焙煎とはかけ離れた高度な世界で、私の焙煎の何が悪いのかは、今一つ不明。その後、旦部幸博氏の本も読み、コーヒーの焙煎プロセスの概要をつかんだ。で、さらにネットで検索すると、手鍋で焙煎するプロがいることがわかった。そこで仕入れた情報などを総合すると、おおざっぱに以下のような二つの工程になる。

1.蒸らし工程
比較的低温で、容器をやや密閉して温度・湿度を一定に保ち、豆の水分を除去する。

2.焙煎工程
高温で処理し、豆の中の成分の化学反応を起こし、コーヒーとしての香りやうまみを生成する。

で、ブログなどで多く語られるのは、2の焙煎工程がほとんどで、1の蒸らし工程については、一行程度しか触れられていないことが多い。しかし、田口氏や旦部氏の本によれば、実は1の蒸らし工程が非常に重要であるとのことだ。ここで水分を抜き切らないと、焙煎工程で加水分解の反応が生じてまずくなるというのである。
実は、1の蒸らし工程ではいろいろなことが起こっている。まず、温度が上昇し、豆が柔らかくなる。さらに過熱することにより、内部の水分が蒸気になり、おそらくその圧力で豆が大きくなる。(実際、焙煎後の豆は2倍程度に大きくなる。)その状態で徐々に水分が抜けていくと、外形は保持されて、多孔質の乾燥した豆になるわけだ。この多孔質の乾燥したコーヒー豆が焙煎工程に重要だというわけだ。
この条件を、手網焙煎で実現できるかというと、かなり難しい。炒り用の手網は上下とも網であり、空気の通りが良い。よほど均一な炎で加熱しない限り、豆の上面と下面の温度が違ってしまう。豆の温度が均一にならないと、水が豆の内部で凝集してしまい、抜けきらなくなる。この問題点は、田口氏の本でも再三指摘されていた。焙煎装置の排気口を絞って、蒸し焼き状態にして水分を十分に除去することが重要だとのことだ。排気口を絞るのは、温度を均一にするためで、豆の中で水が凝集せず蒸気の状態を維持するためと思われる。水は蒸気のまま焙煎装置から出ていくのだ。
片手鍋で焙煎すると良いのは、初期加熱で密閉状態を作っている点だと思われる。私も手網をやめて手鍋にしようかとも思ったが、手網の手軽さも気に入ったので、こいつをなんとか改良したいと調べたところ、簡単にアルミホイルを被せれば良いという記事を見つけた。実際、上部が密閉で、下部が網の焙煎鍋があるようだ。価格が高いので、安い1500円の手網にアルミホイルを被せることで試したところ、非常にうまく行った。図にすると、以下のようになる。
Baisens1.jpg
網だけでは、熱風が筒抜けになってしまうが、アルミホイルで覆うことにより、豆の温度をある程度均一化できるようになる。(と思われる)

アルミホイルは、穴をあけずに上部を完全にふさいでしまった方が良い様だ。(穴をあけると流れができて不均一になる)これで焙煎すると、非常に再現性良く焙煎ができるようになり、味や香りもスーパーで買った豆に勝るとも劣らないものができるようになった。煙や蒸気は下面の網から出ていくので、問題ない。さて、スタバのコーヒーに匹敵するものができるのかは、これからの修行次第だが、キーポイントは大体理解したので、今後いろいろ挑戦してみたい。
いやしかし、コーヒー飲みすぎて胃が痛い。

2020.11.13 追記

おお、13日の金曜日だ。
ついに、ダイソーに行き、500円のガラス蓋付きテフロン加工の片手鍋を買ってきた。ハマコーヒーの手鍋焙煎方法を試すためだ。YouTubeを二度見て勉強し、実際にやってみたが、例によって一回目は失敗。手網に比べて、余熱が大きくなかなか冷却できず、黒焦げになった。しかし、実際には問題は余熱だけでなく、途中の脱水処理が不足していたと思われる。さて、具体的な方法はYouTubeで確認いただくとして、手網と手鍋、両方やってみての感想としては、手網じゃ全然だめってことだ。もちろん、熟練すれば手網でもうまく焙煎できるかも知れないが、ハードルは高そうだ。一方、手鍋焙煎は、キーポイントを押さえればうまく行きそうだ。それはやはり蒸らし行程である。
手鍋での蒸らし行程は、ガラスの蓋を取らずに中火で加熱する。もちろん、焦げないようにシェイクするわけだが、途中で蓋を開けて水を出すことをしない。まあ、ガラス蓋には小さな穴が空いているので、そこから少しずつ蒸気は抜けるが、豆を乾燥させるには足りない。この状態で加熱すると、まず、豆から出た水分が蓋に結露して水滴になる。しかし、それをかまわず加熱を続けると、蓋の水滴が無くなっていく。これは、ガラス蓋の穴から吹き出したものと思われるが、引き続き豆からは水分が出てきており、鍋の内部は高温の蒸気(気体なので見えない)で満たされる状態になる。おそらく、これが本来の蒸らし行程で、高温の蒸気で豆を包み込むのが重要なのだと思われる。で、1ハゼ開始あたりで、火力を弱めつつ、蓋を数回開ける。動画では、温度上昇を抑えると言っているが、私の意見としては、おそらくこれが最終乾燥工程だと思われる。1ハゼ直前あたりで、豆を完全に乾燥させる。(乾燥工程直前は高温の蒸気で均一に加熱されている)鍋も豆も全体が沸点を超えた高温状態なので、蓋を開けると一気に水蒸気が拡散し、豆は乾燥状態になるものと考えられる。こうして完全に乾燥した状態で、さらなる高温状態に持って行き、焙煎を完了させるのだと考えられる。

baisen-nabe.jpg
ガラス蓋が熱くなるまで加熱して、鍋の中を水蒸気で充満させた後に、蓋を開けて一気に乾燥

こういったストーリーを頭に入れて、再度挑戦した。今度は鍋の余熱による効果も考慮して、少し早めに火を消して、焙煎終了後も少しのんびりと冷却することで、豆の水気を完全に取り除いた。で、できたコーヒーは、さすがにこれまでとはひと味違う出来だった。
豆の温度をある程度上げれば、見慣れたコーヒーの色になる。どれくらい加熱すれば、どの程度の色になるか、それは少し練習すれば誰でもできる。手網でも手鍋でも困難さはそれほど無い。しかし、問題はそこでは無い。高温で豆の色が変化し、コーヒー独特の香りや苦みが生まれるとき、豆の水分が完全に除去できているかどうかが重要ポイントだ。熱伝導率の悪い1cm程度の豆の芯まで完全に沸点を超えさせて、豆の外まで蒸気を放出させる工程が重要だ。網を直火であぶっても、なかなかこの状態にならない。鍋全体を高温にして、全方向から豆を加熱することで、豆の芯から水を蒸発させることが可能になると思われる。この時、蒸気は熱の伝導媒体になっていると考えられる。蒸気が無いと、放射熱による加熱のみになり、おそらく効率が悪い。これが蒸らし工程の真意であると、私は勝手に解釈した。

2020.11.14
焙煎に失敗したコーヒー豆の匂いは、やや焦げ臭いのだが、この匂い、どこかで嗅いだことがあると思い、思い出したのが木酢液である。木酢液は炭を作る際に出てくる液で、酢酸や各種有機物が含まれていて、独特の匂いがある。殺菌作用などがあって便利だと、ホームセンターなどで販売もされているが、人体に使用するのは好ましくないとされている。コーヒー豆の焙煎は、まあ炭焼きにも似た工程であり、似たような化学反応が生じてもおかしくない。木酢液の生成される処理は乾溜と呼ばれるもので、高温で低酸素状態で反応してできる水溶液である。つまり、コーヒー豆に水分が残留していると、この乾溜と同じ工程が生じてしまい、木酢液と似たものが豆の中にできるのだと想像される。それが、特有の焦げ臭さで、飲んだ時のまずさの原因だ。こう考えると、焙煎に失敗したコーヒーは体に悪そうだ。実際、胃にこたえるような気がする。蒸らし工程を十分にして、水分を除去してから高温処理を行うことで、木酢液の生成を抑えなければいけないと思われる。

2020.11.22
その後、ダイソー500円鍋でそこそこうまく焙煎できるようになったのだが、毎回鍋が傷んでいくのが気になってきた。アルミのテフロン加工鍋なので、いろいろ不安がある。まず、テフロンの耐熱温度は決して高くない。特に400℃を超えると、毒性の高い物質が生成されることが知られている。コーヒー豆の焙煎は、ほぼ空焚きに近い状態なので、焙煎の進行具合によってはテフロンの熱分解の危険性をはらんでいる。また、コーヒー豆の酸とアルミの反応も気になる。アルミニウムの摂取は脳に良いものでは無いからだ。長く楽しむなら、やはりアルミ鍋は好ましくない。というわけで、ステンレスの鍋をamazonで購入した。きれいな鍋だったのだが、いきなり焙煎が難しくなった。鍋全体の温度の均一性が悪くなり、豆が焦げやすくなったのだ。市販の焙煎装置などでは、同様にステンレスを使用しているものが多いのではないかと思われるが、多くのものが焙煎槽全体が回転して、全体の温度が均一になるようになっている。一方、鍋による焙煎では下面のみの加熱なので、温度の均一性は、鍋の熱伝導のみに頼ることになる。アルミ鍋は熱伝導が良いので良かったのだが、ステンレスは熱伝導が悪いのだ。そのため、なべ底ばかり温度が上がり、豆が焦げてしまうわけだ。今はゆっくり加熱することで、何とか焙煎できているが、アルミ鍋に比べれば成績は悪い。一応、ステンレス層の内側に鉄が仕込んであり、温度が均一になるように工夫された鍋なのだが、この程度では不十分だと思われる。
で、だんだん自分でステンレス板を加工して焙煎装置を作りたくなってきた。そう思ってネットで検索したら、結構自作している人がいることがわかった。いくつか見てみたが、自作は難しいのだということが良く分かった。というわけで、しばらくは、ステンレス鍋で我慢し、小手先の熟練でどこまで到達できるのか、頑張ってみることにした。現在、専門店の焙煎には全然かなわないレベルだが、飲むのが嫌になるレベルは脱しているので、各種豆の味の違いを楽しめるようになってきた。現在、世界各国の8種類の豆をそろえて楽しんでいる。
ちなみに、焙煎窯の材質を何にすれば良いのかというのは、プロ用機でもなかなか奥の深い問題だと、これまたコーヒーに詳しい身内に聞いたことがある。本格的にやるなら、やはり鉄製が良さそうだが、鋳造と鍛造では、同じ鉄でも成分組成が大きく異なり、比重(熱容量)や熱伝導性が異なるらしい。

2020.11.23
再度ハマコーヒーのYoutubeで勉強して、心を入れ替えた。要するに、手鍋焙煎では、ちゃんとした焙煎装置と異なり、温度計などが一切無いため、鍋の中の温度を知るすべが無い。つまり、頭でっかちの私が何か手わざを繰り出そうにも、手掛かりとなる情報が無い。頼りは、ガラスの蓋から見える豆の様子と、1ハゼ、2ハゼのみだ。店主によれば、まずは焙煎の条件を一定にして、1ハゼの時間を再現できる様に練習せよということで、ご説ごもっともである。蒸らし工程での豆の乾燥などといっても、結局温度がわからなければ手の出しようも無いので、1ハゼ時にまとめてやるしか手がない。1ハゼが持続する程度に冷却するという手法で、1ハゼ付近の温度をある程度管理できるというわけだ。というわけで練習し、8分で1ハゼ、その後蓋を開けて温度調節という手法をエチオピアGUJIの豆で、だいたい再現できるようになった。おかげで、香り高いコーヒーができてとても満足した。気を良くして同じような条件でマンデリンに挑戦したら、全然温度が上がらず、1ハゼに10分以上かかった。豆が二まわりくらい大きいので、温度が上がらないらしい。重さは同じ120gなので、必要な熱量はさほど変わらないはずだが。さて、このマンデリンでも、焦がさずに8分で1ハゼできるのか、なかなか難しい問題だ。
そういえば、ずいぶん勉強させてもらったので、ハマコーヒーさんからも豆を買ってあげないといけないなあ。(これまでは、主にコーヒーマーケットと松屋で買っている)

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