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ウイルスと進化論 [日常]

 まったく専門家ではない。かつて理学部に在籍したころ、生物科の先生と酒飲み話で説明を聞いたレベルでの理解だが、生物の進化は突然変異と自然淘汰によるものだと考えられているそうだ。テレビ番組などで、生物の巧妙な仕組みを、「この植物は進化によってこのような機能を手に入れた」的な表現で、あたかも英知をもって仕組みを工夫したかの様に語られることがあるが、実際にはそのような仕組みを、突然変異で偶然に手に入れた個体が生き残ったというのが真実のはずである。このような突然変異と淘汰が、気の遠くなるような時間繰り返されて、現在の多様な生態系があるというわけだ。人類も、自然環境の変化により、淘汰され、現在の我々がその環境に適合して生き残った。
 スロベニアから来た研究者が、酒の席でスロベニア人はみんな山が好きだと言った。以前、敵国に攻められた際、山に逃げたスロベニア人だけが生き残り、他は殺されてしまったので、山が好きな人の子孫しか居ないのだそうだ。蚊に刺されると痒くなるのも、蚊に罪は無い。蚊にさされるとかゆくなるような遺伝子を手に入れた人間が生き残り、痒くならない人は、蚊の媒介する伝染病で亡くなったのだろう。ニューカレドニアで蚊に刺されたとき、痒くならずに驚いた。おそらく、私はニューカレドニアでは生き残れないのだろう。
 人類は高度な文明と医療を手に入れたので、そう簡単に淘汰されなくなった。猛暑が来ても冷房で生き延び、感染症にも新薬を開発して生き延びる。この状態は、かつての進化論が通用しないとも言えるのではないだろうか。なかなか自然淘汰されないのだ。自然に適合しない個体も、英知とエネルギーにより生きながらえる。一方、環境そのもにも人類の意思決定が大きな影響を与えている可能性もある。自らが大量の化石エネルギーを消費して気温を変化させ、自らの生存を脅かしつつ、脅かされた生命をさらに大量の化石エネルギーで維持するという、複雑で面倒な状態だ。
 こんななか、時々深刻な感染症が発生する。宿主を殺してしまう病原菌やウイルスは、本来なら淘汰されてしまう個体である。宿主が死んでしまえば、他の宿主に感染することができないのだから、宿主もろとも消滅してしまうわけだ。だから、正しく進化した病原体は、宿主を殺さないはずなのだが、ここでも人類の高度な医療が影響を与える。高度な医療を施さなければ亡くなってしまう人が、高度な医療で生き延びるわけだ。ついでに病原体も生き延びる可能性を見出す。抗生物質に耐性をもった病原菌などがその例だろう。高度な文明と医療のもとでは、病原体もまた複雑怪奇な進化を遂げるのだ。
 こうしてみると、ウイルスとは何なのだろうと、素朴な疑問が湧く。ウイルスは生命体を宿主として増殖し、個体数を増やそうとする。それは、人類をはじめとする他の生き物と同じだ。ただ、人類は個体数について認識しており、それをコントロールしようとする意志を持つ。しかし、ウイルスに意思は無い。しかし、増殖はする。おそらく、この増殖に向かうベクトルが地球上のすべての個体に共通するベクトルであり、(私にとって理解できない)大きな謎だ。
 新型コロナウイルスは、TVの情報によれば、80%の人は重症化せず、残りの20%は重症化し、生命維持機能に弱点を持つ高齢者などでは死に至るという。感染症の専門家はTVでずるがしこいウイルスだと表現した。重症化しないと、ウイルスをあまりまき散らさないので、感染力が低くなる。適度に重症化する必要があるのだろう。しかし、全員重症化すれば、宿主が亡くなってしまい、感染が途絶えて蔓延できない。80%がキャリアとして機能し、20%が感染源になるというのは、確かにずるがしこい。このずるがしこさに、一部の国では医療が崩壊しかかっている。医療が崩壊すれば、人類の英知による介入が不可能になり、自然淘汰に戻ってしまう。人類の医療と感染症の戦いという意味では、感染症の勝利なのだろう。しかし、爆発的に増殖したその先には一体何があるのだろうか。個体数を増やすことが正義だという、このからくりのゴールは何なのか。
はかり知れない。

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