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珈琲の手鍋焙煎、温度計を導入したら最高だった [日常]

手鍋焙煎は、アルマイト鍋の蓋に穴を開けて、良い感じに焙煎できるようになったのだが、どうも今一つ風味が立たない感じがしていた。1ハゼまではだいたい良いと思うのだが、そのあとがどうも様子がわからない。さてどうしたものかと、思っていた時、アマゾンでオーブン用のバイメタル温度計を見つけた。蓋につけると、豆の温度が測れそうだ。なるべく底に近いところまで届くものを探したところ、TS-BX53というものが良さそうだと、早速クリックした。私が買ったのは1700円くらいしたが、もっと安く売っているショップもあるようだ。これで、10℃から290℃くらいまで測定できる。華氏温度がメインなのでちょっと見にくいが、まあまあOKである。
早速、蓋に穴を開けて装着して、焙煎してみた。すると、この温度計、完璧に機能する。バイメタル式なので、レスポンスや精度が気になっていたのだが、結構良さそうだ。しかも、豆の温度をほぼ正しく測定できている感じだ。
以前も、温度計の導入を検討したことがあったが、どうせならデジタルでサンプリングしてPCに読み込ませて、リアルタイムでプロファイルのグラフを描かせたいなどと考えていた。しかし、実際にバイメタル式の温度計で焙煎してみると、これでOKだという事がわかった。通常の焙煎機の場合は、ドラムの回転は自動なので、プロファイルを見ながらガス圧とダンパーの調整を行うのだろうが、手鍋焙煎では絶えず鍋を振っているので、のんびりプロファイルを見ている暇は無い。むしろ、目安になる温度と時間を表にしておき、それを見ながら鍋を振って、においを嗅いでいたほうが現実的だと思う。

私の場合、ネットに公開されているプロのプロファイルを参考に、以下の参考値をメモに書き、それを目標に焙煎してみた。
100℃ 2分
120℃ 3分30秒
140℃ 5分30秒
160℃ 7分
180℃ 9分
190℃ 11分
ちなみに、これはHighローストのプロファイルだ。手鍋焙煎では十分な予熱は難しいので、豆をあらかじめ電子レンジで少し温めて、それを予熱の代わりとしてやってみたが、それでも100℃到達が1分近く遅い事がわかった。その一方で、140℃付近の温度上昇はかなり速くなっていた。さらに、1ハゼは180℃くらいで始まるが、1ハゼが始まるとさらに温度上昇が速まった(発熱反応だと思われる)。しかし、ここでへたに火加減を絞ってしまうと、1ハゼが終わった後、温度が上がらなくなってしまうことが分かった(発熱反応終了のため)。1ハゼ中は、火から離すなどして温度調整を行い、火は絞らない方が良さそうだ。温度計の恩恵は、煎りあげ付近で特に大きい。速やかな焙煎のためには適切な昇温が必要だが、温度が上がりすぎると豆の細胞壁が壊れてオイルが出てしまう。これを避けるためには、温度が上がりすぎないように終盤の温度を調整する必要があり、これは温度計無しには不可能だ。
以上、温度計を導入したことで、これまでの焙煎はメイラードフェーズの温度上昇が速すぎで、そのため風味が充実しないのではないかという事がわかった。また、1ハゼ後の温度上昇が遅い、もしくは逆に温度が下がっていることも明らかになった。これも風味の消失につながると思われる。
これまで、2年以上温度計無しで焙煎してきたが、やはり最低限温度計は必要だと痛感した。一応実験家なのだから、それぐらい気が付けよという気がするが、私の中でコーヒー焙煎は家庭料理と位置付けており、妙な方向にのめり込まない様にしていたのだ。しかし、家庭料理でもてんぷらの油の温度くらい測るので、まあバイメタルの温度計くらい導入するべきであった。
ちなみに、蓋には穴を開けてあり、そこから水蒸気や煙が出ていくので、焙煎中に蓋を開けることは無い。穴から出てくるにおいを嗅いで中を想像するのだが、今回温度計を導入したので、中を見る必要はほぼ無くなった。
Thermo-tenabe.jpg
温度計を装着した手鍋。これでほぼ完璧! 軸の長さが7㎝程度あるので、中の豆の温度を測定する事ができる。なお、標準的な焙煎量は165gとしている。
蓋は、太さ2mmのステンレス針金の取っ手を取り付けてあり、鍋の取っ手と一緒に握って固定する。この鍋は上下にも大きく振って、中の豆を十分攪拌する。ガラス蓋は重いので、こうはいかない。

追記
初期加熱の昇温レートが低いことについて、ちゃんと考えてみたら当たり前の事だとわかった。通常の焙煎装置のプロファイルは、予熱温度からボトムを経て昇温に変わるが、ボトム温度が100℃近いのだ。つまり、プロファイルに現れる部分は、100℃から200℃くらいの間であり、100℃以下は未知の領域として、グラフの縦軸も室温は表示されていない。一方、手鍋焙煎では、ナベの予熱はあまり効果が無いので、開始直後の豆の温度は30℃程度で、そこから100℃までは70℃程度上げなければならない。100℃から200℃を10分くらいかけるレートで30℃から100℃まで上げたら全然追いつかないのは当然である。焙煎機と同じプロファイルにするには、最初にかなり強い火力で加熱する必要がある。それはだいたい、100℃以降の加熱には強すぎる事になる。途中で火加減を微調整するのは難しいので、100℃以降のレートに合わせた火加減にして、初期加熱はのんびりやるというのもありかと思われる。一方、160℃以降では、今度は加熱は火力が足りなくなる。これもここで火力調整を行うのは難しい。いっそのこと、かなり強い火力にしておいて、途中は火から少し離して昇温レートを加減するというのもありかも知れない。しかし、そうすると火から離している時間が長いので、なかなか難しい。

さらに追記
焙煎機に使われている温度センサーはおそらくステンレスでシールドされた熱電対だと思われる。ネットで検索すると、時定数は1分程度で、正しい温度を表示するまでの時間は5分程度という事になる。これが、豆を投入してからボトム(中点)を示すまでに1分ほどかかる理由だが、このレスポンスの悪さは、焙煎開始時だけでなく、焙煎終了まで続くことになる。つまり、はじめは豆の温度が低く、センサーの温度が高い状態だが、途中から逆転し、豆の温度が高くセンサー温度が低い状態になる。したがって、焙煎終了温度200℃という表示の場合、実際の豆の温度はもう少し高いはずである。実際の温度はレスポンスの早いセンサーで測ってみないとわからないのだが、完全に想像でグラフを描くと以下のようになる。手鍋で焙煎機よりもレスポンスの速い温度計を使う場合は、焙煎機の温度とは少し異なることになるはずである。
roast-profile.jpg
赤のカーブが一般的な焙煎機による焙煎プロファイル。青のカーブは、私の感覚で描いた実際の豆の温度の想像値。熱容量の大きな窯の予熱による初期加熱はかなり高速であることがわかる。この加熱プロセスは、投入する豆の重さで変わるはず。

2022/12/20 追記
その後、何度か温度計付きで焙煎してみたが、鍋の振り方である程度想定したプロファイルをトレースすることができるようになった。しかし、やはり1ハゼ前の加熱に力不足の感じで、なかなか温度が上がらない。一方、1ハゼが始まると急に温度は上がりだす。これを書きながら、1ハゼで温度が上がらなくなり、それは水分蒸発のための潜熱によると書いたコーヒー屋さんの記事を思い出した。確かに、1ハゼ前はかなり蒸気が出てくるので、そのために温度が上がりにくいのかも知れない。そうなのであれば、これは仕方のない物理現象なのである意味避けようがない。むしろ1ハゼ開始後の温度上昇を制御するのが重要という事だろう。バイメタルの温度計のレスポンスはどの程度なのかまだちゃんとしらべていないが、そこそこ速そうなので遅延は無いと思って焙煎している。(この温度計、筒の先端に隙間があるので、沸騰水に突っ込むと中に水が入りそうで、怖くてやっていない。水が入ればほぼ確実に壊れると考えている。焙煎後もすぐに外し、水洗いはせずにアルコールで拭いている。)
豆の種類によって、結構温度上昇の仕方が違うように感じる。しかし、いまのところ1ハゼ開始は185℃あたりでかなり再現性が良い。自家焙煎のお店のプロファイルに比べると高めだが、まあこんなものかと考えている。(上図参照)210℃を超えると、翌日に少し油のにじむ豆が出始める感じだ。Highローストあたりなら、200℃くらいに収めるのが目安か。


2023/1/8 さらに追記

温度計付きにしてから何度も焙煎し、プロファイルをトレースするのもずいぶんうまく行くようになった。プロファイルは、焙煎師により異なるので正解は無いのだが、温度計無しで焙煎しているときとの違いはかなり明確になってきた。
焙煎機による焙煎では、予熱をかなり念入りにして、初期加熱は予熱で行い、その勢いが無くなってきたところでガスで加熱するという感じの様だ。そのため、焙煎機のガス圧のデータはあまりあてにならないし、プロファイルも予熱を前提にしているので、これもあまりあてにならない。手鍋焙煎で、レスポンスの良い温度計では、かなり様子が違っているように思う。
さて、それはともかく、上で1ハゼ前後の加熱がうまく行かないという話を書いたが、そもそも何を基準にうまく行かないと言うのかという話である。手鍋焙煎は、ハマコーヒーさんの動画が基本になっているので、1ハゼで蓋を開けて火を弱めるというプロセスが刷り込まれており、さらに焙煎機によるプロファイルなども気になって、1ハゼ後はRORが低くなるように調整したいと思っていたのだが、これらはすべて思い込みであり、本来は炒りあがったコーヒーの風味で判断するべきである。1ハゼ前の温度が上がりにくいというのも、温度計のレスポンスを考慮すれば当然であり、そこで頑張れば、今度は1ハゼ後の温度上昇が高すぎるという事につながるのも当然である。特に、1ハゼ後、温度が上がりすぎるというのも、上げすぎてはいけないという刷り込みによるので、そんなことを気にせずに焙煎してみるというのが正しいアプローチだと気が付いた。
でやってみると、実際にはそんなに気を遣うべきではないという事がわかってきた。1ハゼ前には水蒸気の発生が増えるので、温度が上がりにくいが、気にせず放っておけば、そのうち温度は上がる。で、1ハゼ後は温度は上がるが、びっくりするほどでも無いので、これも放置すれば、実際には良い感じで焙煎は進み、「ここ」というタイミングで終了すれば、それがベストという印象だ。なんか曖昧な表現だが、結局のところ、焙煎開始から終了まで火加減は変えずに放置でそれほど問題無さそうだ。あとは温度計を見ながら、鍋の振り方で調整すればOKである。そもそも、鍋をガスの火で加熱する方式では、驚くほどの急加熱は不可能であり、自然とRORは下がっていく仕組みである。そのため、ある程度火加減を調整してこのくらいと決めたら、その先は振り加減で調整するのが吉だ。プロファイルにもよるが、印象としては、最初の2分くらいはあまり振らず、初期加熱をすみやかに行う。その後、水抜き工程に入るので、頻繁に鍋を振って、温度上昇をゆっくりにして、十分に水分を飛ばす。5分あたりから、今度はがんばって加熱しないと十分に温度が上がらなくなるので、振りは少なめにして温度上昇を頑張ってもらう。で、この後はこの振りをおさえた状態で最後まで行く感じだ。高温になれば、自然とRORは下がっていくので、煎りあげのタイミングだけを気にしていればOKという状態になる。この感じで、Highローストなら210℃くらい。Full Cityなら220℃くらいで、12-15分程度で終了する。もちろん、豆が変われば1ハゼ温度が変わったりするが、それは結果であり、やることはあまり変わらない。というか、あまり調整のしようが無い。
これまでの経験上重要なのは、2ー5分の間のゆっくり加熱工程だと思う。穴あき蓋のアルマイト鍋なので蓋は一切開けないが、100-140℃くらいの間の水抜きというか、豆の温度の均一化というか、このあたりのゆっくり加熱で、そのあとの加熱による化学反応に差が生じると思われる。特に、水分が十分に抜けないと、1ハゼで高温水蒸気による芯焦げをおこす。さらに加熱が速すぎると芯の化学反応が不十分な、青臭い芯残りも生じる。これらの異常反応が起こると、飲めないレベルの味になる。1ハゼ後の昇温が足りずにもたもたすると、不快な苦みが出る反応が進み、いわゆる苦ーいコーヒーになる。じっくり焼けばマイルドになるのかと思うとまるで逆だ。じっくり焼くのが良いのは低温域の話で、1ハゼ前後は素早く焼くのが重要だ。特に、1ハゼ前の加熱が足りずにもたもたすると、いわゆる「ベイクト」になる。これは、1ハゼの高温高圧による化学反応でコーヒーらしい成分が生成される工程がうまくいかず、単に加熱による温度上昇に伴う反応だけで、見た目はコーヒーだが、コーヒーらしい風味成分が十分に生じない状態である。いわゆるロースト(焙煎)でなく単にベイクト(焼いただけ)という事だ。(追記:いい気になって書いたが、この記述はおそらく間違っている。1ハゼと風味の形成はあまり関係ないと思われる)

結局、100℃までの初期加熱とメーラードフェーズ以降は強い加熱で、途中の100-140℃あたりの水抜き(蒸らし)工程だけをゆっくり加熱にすれば良いという事になる。と、いまのところ思っている。あとは好みというか、手腕というか、腕の見せ所なのだろうが、そこまではまだ到達していない。

2023/1/9 早速修正:やはり、1ハゼ後の加熱加減は非常に重要だ。まあデベロップメント工程と言われ、腕の見せ所なので、当たり前か。実際、いい加減にかなり強火で焼いたら大失敗して、なんともまずいコーヒーが出来上がった。前半の加熱がしっかり管理されているので、香りは悪くないのだが、味が抜けてしまった。やはりRORを少し抑え気味に、かといってのんびりになりすぎないように、結構絶妙なコントロールが必要な感じだ。なかなか難しい。

2023/1/18 とりあえず修正
上に記載の内容は、ほとんど「ガセ」だった。
温度計付き鍋の扱いも慣れたので、ある程度自分の設計したプロファイルをトレースできるようになった。そこで、水抜き行程を重要視した、ROR低めのプロファイルを試したところ、同じ豆で2回焼いて、高い再現性を確認し、しかもそれがベークトである事を確認した。もちろん、1ハゼはちゃんとあった。しかし、風味は極めて乏しい。最悪である。上のグラフに示してあるプロファイルでは、基本的なRORは12℃/minくらいになっている。で、そのあと試したプロファイルでは、10℃/minくらいであるが、これは決定的に低すぎた様だ。知人に飲んでもらったところ、マクドナルドのコーヒーに近いそうで、ああ、そうかもと感心した。そう、飲めないレベルでは無いのだが、全然おいしく無い。どうも、RORは12℃/minでもやや低すぎの印象で、それで気の抜けた風味のコーヒーになっていたらしい。プロの方々はさりげなく14℃/minくらいを目安に焙煎している様で、このRORが130-140℃くらいで達成されるのが良さそうな雰囲気だ。もうちょっと高温域でのRORが重要かと思っていたのだが、想像よりも低温でのRORが効いているようだ。
というわけで、温度計を導入したおかげで、焙煎プロファイルの違いと風味の違いの相関が少しわかりかけてきた。こうなると、いろいろなパターンを試してみたくなる。というわけで、amazonにカセットコンロを注文した。これまでは台所のコンロでやっていたのだが、火加減調整がすごくやりにくいタイプなため、もっとシンプルなコンロに変更して、リアルタイムで火加減を調整しようというわけだ。手鍋焙煎の良いところは、原理的に、かなり自由に温度調整ができるとことなので、これを生かしてみたい。

2023/3/8
手鍋焙煎の(いまのところの)結論
火加減は強め。焙煎時間は12分程度。ひたすら振る。うるさいくらい振る。以上。
豆を選べば、その辺のコーヒー屋さんよりもおいしいコーヒーのできあがり。
注:自作の穴あきアルマイト蓋+温度計付き鍋ね
だいたいうまく焼けるようになって来て、手鍋ではこれ以上の改善もできそうに無いので、この趣味も終盤です。

#最近、ようやく出張などをするようになり、ホテルの食事など、外でコーヒーを飲む事も増えた。みんなロブスタを混ぜてるなあと、ようやく気がついた。いわゆる缶コーヒーの味。逆にアラビカだけであの味を出すのは難しそうな気もする。すり込まれた味だ。ただ、コーヒー好きでも、ロブスタを飲むと気分が悪くなる人もいるようだ。私もロブスタ100%のコーヒーを飲んだときはちょっと気分が悪くなった。ブレンドならOKだが、それで高額の料金を取られると別の意味で不快。

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